この記事を読んでいるあなたは、
・好きな音楽を聴きながら一人で歩く帰り道が好き
・精神的に成長したいけど一方で童心も忘れたくない
・学生時代思うように恋愛が運ばなかった
こんな心当たりはないだろうか。
もし一つでも当てはまっていたのなら、ハンブレッダーズというバンドを聞いて、共感の渦に吸い込まれて行って欲しい。
★目次★
①バンドの世界観
②曲中の世界観
③ボーカル・ムツムロアキラの音楽センス
④とりあえずこれ聞け
①バンドの世界観
2009年、高校の文化祭のためにムツムロを中心に結成されたバンドが原点。そこからめきめきと頭角を現し、2020年2月、アルバム「ユースレスマシン」でメジャーデビュ―した関西発の男性バンド。現在のメンバーはムツムロアキラ(Vo&Gt)・でらし(Ba&Cho)・木島(Dr)の三人。「ネバーエンディング思春期」を標語に掲げている。
結論から言うと、彼らのバンドカラーは
一言目で既に汗まみれ 何気ない仕草に二目惚れ 丑三つ時まで反省会 明日こそがんばる(スクールマジシャンガール)
誕生日すら知らないのに またもや思わせぶられて(スクールマジシャンガール)
戦争より悪魔より 二次会の粗相が恐ろしい(睡眠至上主義)
狂気のSaturday Night おうちに帰りたい(睡眠至上主義)
要はキュウソネコカミのKMDT25のような、根暗陰キャのリア充への嫉妬をコミカルに笑い飛ばす世界観が広がっている…
………………そんなことはなかった。
ぐしゃぐしゃに泣きじゃくった 君がイヤホンを取って 少し笑えちゃうような 歌が歌えたらいいな(口笛を吹くように)
このままじゃ埒があかないから せーので言おう 好きだよって 付き合おうって 次いつ会おうね(付き合ってないけどお互いに)
Ah 漫才コントみたいにずっと生きてみたいって? Ah それなら僕とかどうかい? ちょっと笑うところだって(ユーモアセンス)
好き合っているけどお互いに 牽制し合っている女の子(付き合ってないけどお互いに)
確かに彼はクラスのヒーローとはかけ離れているカースト下層だが、陰キャ持ち前の「優しさ」であれこれ想いをぶつける試行錯誤をしている影のヒーローなのである。その健気さがたまらん。
そしてその試行錯誤を描いた歌詞が、自分の青春の黒歴史をつついてくる。人に打ち明けるのが恥ずかしく、消し去ろうとしていた記憶をえぐり返してくる。しかし過去は美化されるもので、その記憶は甘酸っぱくなっているから、えぐられても決して嫌な気分にはならない。むしろ妙な快感すら覚える。Mの読者にはぜひ伝ってほしい感覚。
私の考えですと名乗るのが恥ずかしくなるぐらいの想いや妄想を、ハンブレッダーズは躊躇なく歌にする。だから、次の新曲はどんな体験を詞に書き下ろしてくれるんだろうというワクワク感を常に与えてくれる。出した曲の数はまだそれほど多くないが、ワクワクの循環はすでにできてしまっている。
②曲中の世界観
子どものままで 大人になろう(弱者のための騒音を)
これこそ、ハンブレッダーズの世界観をワンフレーズに凝縮したような歌詞である。
ハンブレッダーズの曲の最大の特徴は、共感を起こす歌詞に思春期以前から経験しがちなエピソードを用いることにある。
表紙で買ったレコードが素晴らしかったんだ ベスト盤には入ってないあの曲が好きなんだ(ユースレスマシン)
人目につかない程度のヘッドバンディング ドラムも叩けないくせに鳴らすビート(DAY DREAM BEAT)
一緒に帰る友達がいなくてよかったな 1人登下校中 ヘッドホンの中に宇宙(DAY DREAM BEAT)
大好きだった少年漫画の 主人公みたいになれはしないけど(逃飛行)
これにより、思春期以前の人にとっては歌詞が自分ごととして全共感できるし、思春期を越えた人からすれば子供の頃の記憶と今を結びつけて共感ができる。歌詞を聞けば無条件に子供心になれる、そんな世界観を彼らは広げている。大人のままで子どもに戻れるというわけだ。
そしてこの子供心回帰路線は、恋愛ソングにおいてさらに強力なパンチを見舞わせてくる。ムツムロは叶った恋も叶わなかった恋も経験し、その度に色んなことを感じたのだろう。その経験に裏打ちされた歌詞が強すぎる。
君がいつも僕にかけるのは 名前を呼ぶ/目を合わせるだけの黒魔術(スクールマジシャンガール)
君の話はいつでも 僕の心をドキドキさせる(RADIO GIRL)
エピソードの対象年齢が小学生ぐらいにまで下振れすることもある。記憶の引き出しが多すぎる。
「テロリストが攻めてきたら 君を守って僕は死のう」(席替え)
あぁ、世界中で僕だけだよ、君の名前 インターネットでいまだに探しているやつは(フェイクファー)
お別れ会で君にあげた粘土細工(フェイクファー)
しりとり、りんご、ゴリラ、ラッパ みたいなお決まりのやりとりで仲直り(ファイナルボーイフレンド)
最後のはマジで共感のかけらも持てない。俺(自称割とピュア)がついていけないほどの純粋な心をムツムロが持っている。では、上二つはどうだろうか…。「ヒーロー妄想」も「好きな人の名前を検索」も、幼稚さの象徴と言われながら思春期でも止められないコンプレックスになっている人が多いものではないだろうか…?その羞恥心を躊躇なくくすぐってくるハンブレッダーズの曲を聴くと時に恥ずかしくなってしまう時がある。それがまた中毒。
しかし青春ばかり回想して過去の思い出にぽわ~んと浸っているだけではない。困難にも立ち向かって歩きだそうという前向きな歌も最近特に書いている。
高層ビルにも月面にも スニーカーで踏み込んでやろう(弱者のための騒音を)
長いトンネルを抜けて まだ歌いたいと思っていた(銀河高速)
続けてみることにしたよ 走る銀河高速(銀河高速)
頼りのない便りをしたためよう したたる涙を原動力に(ユースレスマシン)
どんなことにも躊躇なく取り組み続けた少年の心を忘れずに、歳をとっても、壁を乗り越え成長していこうというメッセージだろう。ネバーエンディング思春期とは、心の中心に据え続けるという意味ではなく、思春期の灯を心の片隅で照らし続けようという意味なのだと思う。
③ボーカル・ムツムロの音楽センス
地味に同志社大学卒という高学歴。さらにツイッタラーの素質あり。その培われた教養と言語化能力の高さ故か、作詞力が最強なのである。韻の踏ませ方が上手く、それでいて思春期っぽさがにじみ出る言葉のチョイスをしている。時に、それを聞いて好いている自分が年不相応に幼稚に思えて恥ずかしくなってしまうほどに。
時代の波ならばHIP HOP イマドキ女子は皆Tik Tok(銀河高速)
正気の沙汰じゃない/狂気のSaturday Night(睡眠至上主義)
平穏に無事に満ち満ちた暮らし 戯言飛び交う宮本むなし(常識の範疇)
ここまで歌詞にばかり注目してきたが、ムツムロの歌い方にも一目置くところがある。
歌い方で変なアレンジを付けることないが、かといってユニゾンの斎藤さんのような透き通った声や、髭男の藤原聡のようにパワーと繊細さを兼ね備えた声を持っているわけでもない。特徴を強いてあげるとすれば、飾りっ気が無く、程よく濁っている。歌手っぽくない「普通」の声。ただ、変にクセを付けず愚直に歌うことで、歌詞の意味が克明に耳に刻まれる。声にエフェクトをかけたり歌い方のアレンジによる脚色を加えたりという細工が一切ないので、純粋な歌詞がその鮮度を100%に保ったまま耳まで届く。こんなに幸せなことはない。純度MAXの歌詞とTHE普通の声という2要素が融合しているからこそ、心にすっと入ってくるパワーが彼らの歌にはあるのだ。2つの要素が片方でも欠けるとハンブレッダーズのバンドカラーは成立しない。
④とりあえずこれ聞け
「DAY DREAM BEAT」
ハンブレここに極まれり、です。この曲のコンセプトは、「独りぼっちの寂しい帰り道」を「好きな音楽聞き放題の華々しい帰り道」としてポジティブに捉えた歌。「ぼっち」で帰ることは恥だという風潮が強い中、周りの忖度なしで音楽を聞けるというメリットを語ることは「負け惜しみ」のようで、自慢できることではなかっただろう。そんな負の感情をプラスに転換して歌い上げる彼らの価値観に共感し、一夜にしてハマった。
俺は大学の友人から「ハンブレッダーズいいよ」と勧められ、この曲名と「一緒に帰る友達がいなくてよかったな」という歌詞を預かった。これが初めての出会い。そして、一人になった帰り道に初めて聴いて、一発で虜になりました。初めて触れた曲がDAY DREAM BEATで本当に良かったと思ってる。だからこそ今も勧めてる。
友達と一緒に家に帰る時間が好きだったか否かは関係ない。独りぼっちで音楽を聴きながら家に帰る時間を一瞬でも「こんな時間もいいな」と思ったことのある人は絶対に聞いてほしい。特に歌詞を。
そして興味を持ってもらえたら、他の曲も聞いて、彼らの世界をもっと深く知ってほしいと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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